3月27日(日)、この日2回目となるシアターレッドカーペットに、特別上映作品『天国からのエール』の熊澤誓人(ちかと)監督、主演の阿部寛さん、映画の舞台となった沖縄県本部町の音楽スタジオ「あじさい音楽村」で活動する皆さんが登場しました。本作は、沖縄の素晴らしさを伝えるために今年から新設されたプログラム「沖縄プレゼンテーション」作品で、本部町で小さな弁当屋を営んでいた仲宗根陽(ひかる)さんが、プロのミュージシャンを夢見る高校生たちのために、私財を投じて無料の音楽スタジオ「あじさい音楽村」を作った実話に基づいています。
総勢13名の大所帯で現れたゲストの皆さんは、レッドカーペットを歩く間も笑顔を絶やさず、終始なごやかな雰囲気。阿部さんも音楽村の若者に囲まれて、おだやかな笑顔を見せてくれました。熊澤監督は「この映画を沖縄の皆さんに一番に見ていただけて、とても光栄です」とあいさつ。阿部さんも「多くの皆さんの協力を得て完成した映画です。今回この沖縄で初めて上映されることを嬉しく思います」と続けました。
続いてシアター1で行われた舞台あいさつには、熊澤監督と阿部さんの2人が登壇。ほぼ満席の会場からは、割れんばかりの拍手が沸き起こりました。震災直後、撮影のためイタリアに渡ったという阿部さんは、「東京で今までに感じたことのない揺れを感じました。直後にイタリアに行かなければならず、思いを日本に残したまま、異国の地で日本の情勢を案じていました。今、日本はこんな状況になっていますが、自分にできることをやるだけです。そういう意味でも、この映画祭に参加できたことを大変光栄に思います」とやさしく語りました。
熊澤監督は、「昨年10月から約1か月間、本部町で撮影しましたが、準備期間も合わせると約2年間沖縄の方に協力していただきました。その沖縄で最初にこの作品が上映されることが本当にうれしいです」と率直な気持ちを口にしました。また、一昨年10月にこの世を去った、主人公の仲宗根さんについて阿部さんは、「子供たちの夢のために全力でぶつかっていった素晴らしい人。僕にそんな包容力があるのかどうか、自問自答しましたが、少しでも仲宗根さんに近づけるようにと考えながら、毎日撮影に臨みました」と話しました。話が共演者である地元の高校生たちのことになると、それまでずっと真剣なまなざしだった阿部さんの表情が、笑顔でゆるみます。「沖縄の高校生は本当に元気で純粋なんです。一緒にいると高校生に戻ったような気分になって、とても楽しかった」と和気あいあいとした撮影現場を懐かしそうに振り返り、会場は温かい空気に包まれました。
熊澤監督は、映画の舞台が沖縄であることを「東京だと(会話の中で)“○○しますか?”とか、“○○ですか?”という疑問形が多いのですが、これが沖縄だと“○○しましょうね”、“○○さぁね”とやわらかい感じになる。その言葉の温かさが、人の温かさとなって、この映画の温かさにもつながっていると思います」と表現。その評価に会場の皆さんは、うんうんと深くうなずいていました。
最後に、阿部さんが「この映画を見て、皆さんがどういう感想を持つかは分かりませんが、何か一つでも感じてください」とメッセージを送りました。そして熊澤監督が「大切な人へ伝えられなかった想い、大切だと気付かないまま通り過ぎたこと、そんなものを映画の中で表現したつもりです。いつか機会があれば、ぜひ皆さんの感想を聞かせてください。どうぞ映画を最後まで楽しんでください」と締めくくり、会場は大きな大きな拍手に包まれました。